きさらず

君たちはどう生きるかのきさらずのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ジブリらしい映画だったなと。

大叔父様が宮崎駿本人だったのかなと思う。現実世界に嫌気が差して、理想の世界を作ろうとして、それを大義にインコやペリカン、自分の子孫たちに犠牲を払わせようとする。それは眞人たちからすると、現実世界と何も変わらないのだが本人は気付いていない。いや、気付かないふりをしているのだろうか。

世界の微妙なバランスを維持するための政治的な営みは、日々の暮らしに地に足をつけて生きている大部分の人間には、妙竹林なものとしてしか映らないであろうが、高貴な人間はそのバランスを維持するために古今東西、四苦八苦する。それをこの映画では、積み上げられた石の積木のバランスに例えているのが傑作だった。やっている本人である大叔父様は必死であるが、眞人からしたら妙竹林な積木の塔にしか見えない。最終的には無知蒙昧なインコの王に破壊されるが、彼もまた積木の微妙なバランスの上でのみ王たり得るのだった。したがって、積木の塔を破壊した瞬間、彼は全ての権能を失いただのインコへと戻ったのである。

ちなみに私は、この映画で例えると、絶妙な積木の塔のバランスに、それ自体にあまり意味はないと知りつつも、その絶妙なバランスそのものに感動し、なぜバランスを保っているのかを分析し、どうすればバランスをより長く保てるかを考えるのが好きな人間なので、インコの王は嫌いだし、大叔父様とは同床異夢と言ったところだろうか。
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