磯野マグロ

劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬの磯野マグロのレビュー・感想・評価

3.6
【推そうとするその気持ちこそが尊い】68

アイドルを10年以上見続けているので、こういう映画はとてもうれしい。なにがうれしいって「だいたいのオタクは基本的にバカだしいいやつ」ってことが描かれているところ。時間も金も気持ちも使って、いつ目の前からいなくなるかわからない少女(や少年)の幸せを願い続けているというのに、だれも褒めてくれない(当たり前だ)。そんなの、いいやつじゃなきゃとてもやってられないじゃん…。
アイドルたちは一度しかない自分の青春をすてて、オタクから「愛」を収奪する熾烈な競争をしている。オタクたちはみんなそれぞれのやり方で愛とお金を捧げ、見返りとしてアイドルから一瞬の認知と写りの悪い写真が下げ渡される。
もちろん現場に行けはウゼーこともある。つながりたいとか、自己顕示欲の捨て場とか、説教癖とか、沸きたいだけとか、幸せを願ってるとは言いづらいオタクもいる。それでもアイドル現場の大部分は、くまささんや基くんやえりぴよみたいな人たちで構成されている。そこはお互いにお互いの夢を盛り上げようとする、とても優しい場所なのだ(ただあそこの現場、最前管理厳しいよねw)。
側から見たらバカみたいだけど、くまささんみたいに達観してる人もそうだし、えりぴよや基くんみたいに熱量高い人も、その他大勢の人も、オタクはみんなアイドルとお互いの文脈の中で、恋愛や風俗とはまた違った形の高いリテラシーが必要なゲームをしている。そして基本、お互いにハッピー。こんなにいいことは世の中にそんなにないよー。マジで。
まあここまでは大部分がわたしの思い込みと希望だが、こんな世界があることを知ってもらうよすがにはなる映画だった。以下は細かい感想とただ言いたいだけのツッコミ。
・東京に行くっていう一世一代のチャレンジで、真っ先にファンに告知しない運営はあり得ない。オタクなら行くに決まってるし(メンバーに恥かかせられないし)、あんな罰ゲームみたいな告知されたら予定組めない。現場回せないじゃんw
・バス立派すぎ。やはりここはワンボックスにギュウギュウに押し込められよう。
・ChamJamのメンバーはバイトしてないみたいだし、自前の小屋あるし、あそこの運営金持ち。
・誰かが休むときは告知します(しないとトラブルのもとになる)、椅子に座ってパフォーマンスしてもいいんですけどね…
・とにかくメンバーが仲良しなのが現実とかそういうのを超えてとても素晴らしい。リーダーが苦労人で人間できてて素晴らしい。ありがとう。
・ChamJam曲いいよねー。ただこれは演者というより映画制作サイドの問題だけど、生歌がないのは残念。フォーメーションが全く無いのも。実写版「ゴクドルズ」の方が10倍気合入ってた!
・なんだかんだ言っても、舞菜がどんどんかわいくなっていく(またはかわいく見えてくる)のがきちんと映し取られてるってだけで、この映画は推せます。十年一日のオタクと違ってアイドルは日進月歩だからねー。
磯野マグロ

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