千里

朝がくるとむなしくなるの千里のネタバレレビュー・内容・結末

朝がくるとむなしくなる(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

トレイラーと唐田えりかさん出演ということで舞台挨拶とパンフレットへのサイン会付きの回を鑑賞。何の目標もなく、平日は家と退屈な職場の往復、週末は1人で映画館というだけの日々に虚しさしか感じていない今の自分に寄り添ってくれた、めちゃくちゃ刺さる映画だった。

唐田えりかさん演じる主人公希の"毎日ただ過ごしているだけ"という状況が今の自分とかなり近く、凄く共感できた。ただ食べて、寝て、仕事して。希が前職のブラックさに対して「こんなに辛い思いをしてまで何故生きなければならないのか。」という台詞。正に今自分が感じていることと同じ過ぎた。

仕事がコンビニのバイトに変わっても、何も起きない毎日や家族に仕事を辞めたことを伝えられないことに悩んだり。大小違えど、どんな人にも何かしら抱えてるものはあって、それはその人にとっては大きなことで。そういうことを丁寧に描いてくれて、そして誰しもどこかしら正しく生きれていないことを肯定してくれて、とても救われた気持ちになった。

その上で、中学の時に同じクラスだった芋生悠さん演じる加奈子と再会することで少しずつ変化が生まれてくるという物語。劇的な変化ではなく、本当に少しずつの小さな変化というところがリアル。こういう細かな変化を繊細に描いてくれたこと、演じてくれたことが、とても嬉しい傑作だった。

あと本作、これまでの唐田えりかさん出演作の中でのベストアクトではなかろうか。人付き合いに積極的になれない人間性を感じる瞬間と、酔った時のギャップが素晴らしい。

舞台挨拶にて、リアルでも仲の良い友達である唐田エリカさんと芋生悠さんの関係性と、当時のコロナ禍やそれぞれの状況から、今の時代の生き辛さについて作られた作品だというお話を唐田さん、芋生さん、石橋監督の御三方から聞けたことは感慨深い。素晴らしい舞台挨拶だったと思う。

パンフレットに御三方のサインも書いていただけて大満足な映画体験になった。

初回鑑賞スコア : 4.3


2023.12.03 / 2回目の鑑賞 / スコア : 4.5
連日鑑賞の予定はなかったけど、あまりに良すぎたので2回目。幸運なことに上映前舞台挨拶付きの回が空いていたので鑑賞。2回観ても印象が落ちるどころかむしろ上がった。今の自分の状況に希望を与えてくれる。まだ自分は大丈夫だと寄り添ってくれる。いつまでも浸っていたくなる。そんな風に思える作品を作ってくれたことに感謝。めちゃくちゃ好き。

2023.12.19 / 3回目の鑑賞 / スコア : 5.0
渋谷のシネクイントでの上映最終週ということで、石橋監督、唐田えりかさん、芋生悠さん、阿部乙さん登壇の舞台挨拶付き上映を鑑賞。観れば観るほど自分の中で大切な作品になっていく。

冒頭の画面奥から歩いてきて橋で全てがどうでもよくなるシーンと、終盤の加奈子の家で心を癒されてから画面手前から橋に向かって行って、母にずっと言えなかった仕事を辞めたことを電話で話すシーンの対比。同じく冒頭付近で壊れて中々付けられなかったカーテンレールを終盤で付け直すシーンの対比=希の心を表していたりとか。こういう細かいところ好き。
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