バラ科

アイスクリームフィーバーのバラ科のレビュー・感想・評価

アイスクリームフィーバー(2023年製作の映画)
4.5
既存の枠組みを飛び出して、自由になっていく女性の強さや魅力が描かれていると感じた。とてもよかった。

アイスクリームを投げつけることも、店長に内緒で店内を装飾することも、夏休みにイヤリングをつけることも、日常のなかで踊り出すことも、すべてが「逸脱的行動」として表出する。身体的な同性同士の心と身体の衝動も同じくだろう。
赤い髪に刈り上げ、顔面ピアスの女子高生(詩羽ちゃん)が規範を飛び越える象徴のようだな、と思ってみていた。
それだけどこかに抑圧と本来の衝動がある。制限を取っ払って逸脱したい。自由になりたい。蝶のように空を舞いたい。彼女"たち"は羽化する前のサナギだった。

そうして進む道で、意志によって誰かと関わることを選ぶ。ひとりでいたら「なにもない」と自称してしまう自分も、あなたと一緒にいればそうじゃなくなる。それはきっとお互いなのだろう。小説家の彼女にとっても。お店にきたときの目線、そして「アイスクリームつくりにきてよ!」それこそが魂のメッセージの証拠だ。

邪魔に思えた天井のシミさえ、工夫をすれば笑顔をもたらす花になる。意味はいかようにでも作れる。優がオアシスに浸かる側ではなく、作る側になることを望んだように。アイスクリーム屋の店長としてデザインを好きでいることもできる。自分に会いにこないお父さんなんか、自分を選ばないつまらない男なんかいなくっても、楽しく過ごせる。

アイスクリームはつめたくて甘い。銭湯は心も体も温かくする。社会に疲弊した人々にはそんな味わいや場所が必要だ。エネルギーをチャージしたら、そこからやりたいようにやろう。
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