タバスコス

インフィニティ・プールのタバスコスのネタバレレビュー・内容・結末

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ブランドンクローネンバーグの映画は初視聴。

どこか共産圏の空気感を漂わせるリ・トルカ島が舞台であり、独特の文化・産業が他国とは切り離されて存在する。本作の主題になる「クローンへの刑罰」という異様な制度を成立させるフォークホラー的な舞台設計が面白かった。

作品としてのテーマは「仮面」だろうか。
本作で罪を犯した外国人観光客の代わりに罰を受けるクローンはスワンプマンに近いものである。現在の自分と完全に同じ状態の人間が生成され、刑の執行を観察させられる。クローンという自己と分離されていながらも自己と同期する仮面のような存在が罪を肩代わりするときに現れる人間の性質が一貫したテーマとして感じられた。
そしてバカンスが終わると一般的な社会生活を送る人々のペルソナを被って帰りの飛行機に乗っていく。このシーンからなんとなく描きたいことが伝わってきた。

主人公のアレクサンダー・スカルスガルド、助演のミア・ゴスがかなり頑張っていた。この手の常軌を逸した作品を成立させるのは俳優の頑張りだなあと思う。
構図は一点透視がよくつかわれている他、観客を揺さぶるようなフラッシュ的な映像効果が印象的。

主人公は作家。もちろん映画の製作陣も作家だが、世に出した作品が批評の目を向けられているときと、自分のクローンが裁かれる感覚は似ているのだろう。グロくてちょっとおかしい映像の中にもメッセージ性が感じられてよかった。
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