このレビューはネタバレを含みます
サイケデリックでグロテスクな不条理地獄巡り映画。
監督誰か知らずに観たが、ドラッグでラリってるシーンの演出ややたらエログロな映像が特徴的で後で調べたらブランドン・クローネンバーグで納得。
前作の『ポゼッサー』よりは好みだったけど、映画としての軸が弱く感じ行き当たりばったりな展開で中だるみしていた印象。
クローンが出てきた時点で「これきっと本人とクローン入れ替わってるじゃん〜。そして結局入れ替わったのかどうか分からないまま終わるやつじゃん〜」というこっちの予感を作中でも言ってくれる優しさ。
その後もしつこく主人公のクローン(だか本人だか)が何体か出てくる「はい考察してね」感が鬱陶しい。
いまいちこのクローン云々の設定にノレなかったというか飲み込めなかった時点で最後まで悪い意味で居心地悪かったのよね観てて。
「島の中で人を殺してしまったら処刑されるけど、お金払えばクローンを身代わりに出来るよ。クローンが処刑されてるとこは客席で見ててね」っていう設定が意味不明というか因果関係が繋がっていないというか、「被害者遺族は手にかけてるのがクローンって事知ってるの?」「わざわざクローンの処刑見せられるのは罪の意識を味わわせるため?」「金を払えば好き勝手出来る富裕層と、島の警察とのパワーバランスがよく分からん」とアレコレ考えてしまって、その辺感じさせないテンションというかエネルギーがあれば気にならなかったんだろうけど。
とはいえ、クローン生成のシーンのフェティッシュさや、悪趣味さとスタイリッシュさのバランス、サイケなシーンが妙に長かったり一瞬映る死体のグロテスクさだったり、監督のこだわりというか執着を感じる面白い作品だった。