マグロ

唯一、ゲオルギアのマグロのレビュー・感想・評価

唯一、ゲオルギア(1994年製作の映画)
4.0
文化と人と歴史と政治と。

1994年、ジョージア。ソ連の崩壊後、民族紛争が勃発し混沌を極めていた時代。
現状に危機感を持ったイオセリアーニ監督が過去の膨大な映像や映画を再編集。ジョージアという国そのものを再生する4時間。

1部ではジョージアの歩んできた文化、イオセリアーニ映画に必ず出てくるお酒や音楽など、「屈託のない陽気なジョージア人」のイメージのルーツを探る。
また、立地の重要性から度々受けてきた侵略、各国の難民を受け入れてきた過去など、政治・歴史的背景も語られる。

2部ではロシアの統治による悲劇が描かれる。
1部で具にされたジョージアの文化や人や信仰が踏み躙られていく様がありありと冷静な口調で語られる。
品種を限定され水で薄められたワイン、生産物の限定化による誰も飲まない輸出のためだけの茶葉、ジョージア正教への妨害、ソ連的価値観の強要。

3部ではソ連が崩壊し事態が好転するかと思いきや、民族紛争に発展してしまう様が描かれる。
崩壊してもなお介入しようとするロシア、懐柔されたガムサフルディア大統領、政治的に排除された英雄たち、かつて受け入れてきた難民たちによる独立蜂起。

まるでドラマのような悲劇であるが、あくまで静的に、淡々と語られる。
途中ガムサフルディアのところだけ自己主張が出まくってたけど、それだけ真剣だったということ。

ドラマとドキュメンタリーでまったく様相は異なるが、クストリッツァの「アンダーグラウンド」を観た時と同じような感情になった。
監督の怒りや悲しみや愛国心や誇りがありありと伝わってくる。
世界史の教科書ではほとんど語られない小さな国の話。
マグロ

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