あおりんご

丘の上の本屋さんのあおりんごのレビュー・感想・評価

丘の上の本屋さん(2021年製作の映画)
3.0
「本には、人生が詰まっている。」

公開年:2021年
監督:クラウディオ・ロッシ・マッシミ
出演:レモ・ジローネ、ディディエ・レヴェスト、モニカ・グエッリトーレ

原題「幸福への権利」の通り、本作は「人は誰しも幸福を求める権利がある」という根本的なテーマを描いている。
リベロは、移民の少年エシエンに本を貸すことで、知ることの喜びを伝える。 彼にとって本とは人生をより深く理解するための「鍵」だからである。

リベロとエシエンの関係は『グッド・ウィル・ハンティング』のように、温かく美しい。それはリベロは人生の終盤を迎える者であり、エシエンは未来や希望そのものだからだ。しかし、そのバックグラウンドには移民問題や社会不公平といった現実が横たわる。

イタリア映画らしく丘の上の町並みや、柔らかな光に包まれた映像は本当に美しく、温かい雰囲気を醸し出しているが、派手な展開や劇的なカタルシスがあるわけではない。
ゆったりとしたテンポと穏やかな語り口は、人によっては「地味」に感じられるだろう。

しかし書籍のように「静かに人生の本質を問うような作品が好きな人」にとっては、じんわりと心に染みる一作となるだろう。 リベロがエシエンに託した「言葉」や「知識」は、彼の未来に何をもたらしたのか――
映画が終わったあと、見る者の心の中で静かに問い続ける。
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