マインド亀

岸辺露伴 ルーヴルへ行くのマインド亀のレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
3.5
ジョジョシリーズのホラー味の抽出が成功している唯一の作品

●うーん、まさか一度の人生でジョジョの実写映画を映画館で2回も観ることがあるとは…『ダイヤモンドは傷つかない』も別に嫌いじゃなかったし、できれば続編をちゃんと始動して高橋一生の露伴を登場させられないですかねぇ?
『ダイヤモンドは…』がジョジョファンを重視しすぎてジョジョらしさを映像化しておりました。
しかしながらこの『岸辺露伴』シリーズは原作からして荒木飛呂彦先生の持つそもそものホラー味が原液で煮詰められており、そしてバトルではなくサスペンスやミステリーを重視した作品であるので、非常に映画向きなのです。
そして、漫画らしさを映像化したのではなく、(ドラマも含めて)映画らしい映画に仕上げられているのが非常に上手く行ったシリーズでございます。
なので、漫画原作のかなり奇抜な衣装も、ちゃんと(露伴のヘッドバンド以外)現実味があってそれでいておしゃれなので、荒木飛呂彦先生のハイブランドに対する美意識を理解して映画化されており、漫画映画にありがちなすんごい変なルックになることはなかったです。なので安心して観ることができました。

●今回は『黒い絵』がメインの呪いのアイテム。『ルーブルに行く』は、原作読んだかな〜、覚えてないや!
この黒い絵がメインアイテムということで、画面の色構成は基本的にダークな黒。衣装も黒が多く、かなりシックで決まっていてかっこよいです。この世で最も黒く、邪悪な絵、ということでこの映画は黒や影、闇をかなり画面に写し込んでおります。なので、本当は配信スルーしようと思ってたのですが、ちゃんと映画館で観ることが出来て良かったです。できればドルビーシネマなどで撮影、上映してたら良かったのになあ…『これが本当の黒です。ドオォォォォォン!!』

●その肝心要の『黒い絵』ですが、これは楽しみにしてほしいのですが、かなり怖くて不気味で最高に怖い絵でした!この絵が画面に登場した時のゾゾゾっとした感じ、これだけでこの映画は、勝ちだと思いました。

●しかしながら、不満はあることはあります。
あまりにもフランスパートと日本パートの画面のルックに差がありませんか?フランスでの撮影クルーか、機材か、そのものの技術が良いのか、なんだかずっとフランスパートを観たいなあと思うくらいルーブルのパートが良かった。もちろんロケ地そのものの持つ力強さもあると思うのですが、まずもって画面の深みが違う。
もちろんフランスパートが、良い、と言えますが、悲しいかな日本パートがあまりにも平凡、と言えるかなぁと思いました。ちょっとドラマの延長線上の画質というか。カメラが違うのかなぁ…日本でも良いロケ地は使われていると思うのですが、全体的にノペっとしてる感じ。もう少しこのフランスと日本でのルックの統一をしてほしいなあと思いました。

●また、日本パートがこれまた鈍重というか、正直少し眠くなってしまいました。露伴の少年期なんかは、ちょっとキャラクターが統一されてなさすぎかなぁ?原作ではもう既に露伴のキャラだったと思うのですが、映画版では、若かりし露伴はあまりにも幼すぎる気がします。そしてちょっと長いような…少しメリハリにかける印象でした。

●それから日本のさらに時代を遡ったパート、これも全て真相をペラペラと一人で喋るだけ(実際はヘブンズ・ドアで読んでいる)で、ちょっと工夫が足りない気がしました。原作ではあまり気にならないのですが、やはり映画では映画的な解決が必要で、言葉ではなく絵や動きで表現する潔さが欲しかったなあと思いました。思い切って『説明しない』というのでも良かったかも。ちょっとこのネタバラシ部分は長いかなぁという印象でした。(変にラブストーリーっぽさを強調し過ぎかなぁ)

●とにかく、こうやってルーブルの協力の下リッチな映像を作ることができたのは良かったと思いますし、ホラー作品としては面白かったです。もっと無慈悲に人を死なせてサバイバーが少なくても良かったような気がしますが…
フランスパートのユニットが有能のかなぁ…やっぱりフランスパートのルックで統一できればよかったのになあ…と想いました。しかしながら『黒』を観るために映画館で観たほうが良い映画であることは間違い無いです。是非観てください!
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