イージーライター

罪深き少年たちのイージーライターのレビュー・感想・評価

罪深き少年たち(2022年製作の映画)
3.0
ソル・ギョング主演。
少年三人が過去、強盗殺人事件を起こしたとされて服役していた。このことを、ソル・ギョングが扮する「狂犬」と呼ばれた刑事が真相を追うというもの。
実際にあった事件をベースにしている。刑事が事実を解き明かしていくさま、そして事実を求めようとして硬直化した警察組織の中の圧力の中で押し返されていく様を、過去とその17年後とを行きつ戻りつしながら、描いているのは技巧的。よくできている。また人間くさいドラマがそこでくり広げられるのもドラマに深みを与えている。しかしいかんせん、事実にたどり着くことが、私にはたやすく見えてしまう。
狂犬と言われながら、それほど、暴走が重なるわけではない、あっさりめである。

ついでとして、韓国であった事実というのを検索してみた。少年たちが服役している最中に無実を唱える少年たちの声を、刑務所でボランティア活動を支えていたキリスト教の牧師が冤罪を晴らす運動を始めたらしい。また主人公に相当するような警官は実際にはいなかったようだ。ただ無実を裁判で証明していくための論法は映画といくつか重なっている。なので、私が「たやすく見えてしまう」と書いたところは事実に基づくところだったから仕方ないのかもしれない。なお冤罪に結局仕立ててしまった当時の裁判官は、少年たちが無罪を勝ち取ったとき国会議員になっていたという。そして世間からの求めに応じて、謝罪したそうだ。これは日本にはないところだ。冤罪にした裁判官があとで責任を語るということは聞いたことがない。
なんか創作刑事ドラマでこの事件をみるよりも、もっと事実に即した物語で見るか、ドキュメンタリーで見たほうがもしかしたら、もっと身に迫るものがあったかもしれない。