イージーライター

ありふれた教室のイージーライターのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
3.0
異国の話であったり、遠い昔の話である場合にも、その話に共感できるためには話に普遍性がないといけない。西欧の方々が東京物語や七人の侍を見て賞賛を送るのも、見る西洋人の方に、彼らの生きる舞台とまるで違う世界だろうが、自分事として捉えられる何かが、あるはずなのだ。

本作についてはドイツの学校が舞台である。現代の方ではあるが、まるでわたしたちの学校とは趣が異なる。日本では小中学校に当たるのだろうか。そこで児童生徒だけの力で作る学校新聞は、その記者たる児童生徒はその年齢でジャーナリズムを自らに課し、学校、先生にとって不都合なことでも臆せず書く。学校においては児童生徒の指導方針は「不寛容(ゼロ・トレランス)」。間違いがあれば義務教育下でも児童生徒を放校させる。一番私が驚いたのは、用務員に当たる人だろうか、その人子どもが用務員が働く学校に通っている。教職員が務める学校にその子が通うというのは日本だとよほどの田舎でないとまず教育委員会が認めないだろう。

何を書いているのかといえばあまりにも日本とドイツの学校を巡る世界が違うのである。それでいて、私にとって自分ごととして捉えられるものが、この映画には見いだせてなかった。普遍性を感じられなかった。学校が舞台だから、教職員、児童生徒、親が登場するが、私に限ってかもしれないが、どこからどこまでも遠い世界のことにしか感じられなかった。  

ただ、ではそれでいて全くつまらなかったのかといえば、ドイツの学校がわたしたちの思う学校と違いすぎるそのことが、ある意味振り切れすぎていて、面白いとは思った。前掲の通り、学校新聞を巡る児童生徒のプロフェッショナル意識、ドイツの先生たちのかなりドライな児童生徒への距離感。映画によって世界を知るという点において、他の外国語映画同様に、この映画にも魅力はそれ相応に存在する。