春とヒコーキ土岡哲朗

特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテストの春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

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仕事に追われながらも、プレイヤーであり続けたい。

管理職なのが良かった。前作の映画『誓いのフィナーレ』では、主人公の久美子が部長に就任して後輩の人間関係の世話をするという管理職な立場になってしまい、一人の演奏者としての面が薄く、表現に力を注ぐ人の話が見たいのに残念だった。でも今回は、部長になって2作目、つまりこちらも管理職編になったことは受け入れているのもあり、管理職具合がよかった。厳密には、管理職兼プレイヤー。そりゃみんな自分のプレイのことだけに専念したいけど、部活である以上、人間関係の世話や事務作業もやらなきゃいけないよ、という面に納得がいった。これは部活だけじゃなく、プロであってもそう。現実にはほとんどの人間が、誰かと関わって活動している以上、そのコミュニティの維持のための事務作業があったりする。スポーツや表現に限らず。

今作のメインは、部内で演奏グループを作るにあたって、誰かを誘う、誰かに誘われる、ということ。加えて、久美子は投票の仕方を考えたり、グループ作りの進捗を把握する役目もある。最初は久美子は、自分から誰かを誘うことはせず、あぶれた子のフォローに回ると麗奈に告げる。すると、麗奈はそのプレイヤーとしての意地のなさに少しいら立つ。結局、麗奈から久美子を誘ってグループ入りが決まったとき、麗奈は久美子の発言が不満だったことを明かす。しかし、久美子も自分が何番目の候補だったのかを麗奈に尋ね、「麗奈に誘われるなら一番がいい」と告げる。このシーンが、管理職に追われながらもプレイヤーとしてのこだわり・理想を持っているんだというのが表れていて、一番好きなシーン。

3期を期待して待つのみ。今作はアンサンブルコンテストの話だったが、ラストシーンで悔しさをぶつけるべく、一番の目標である吹奏楽コンクールに向けてやっていくぞというのが麗奈から宣言されて終わる。来年の春、8年ぶりにテレビシリーズで続編が見られることもうれしいし、熱中主人公ではない、人とのバランサーという特殊な主人公の久美子が、プレイヤーとして燃えるところが楽しみ。今回は練習シーンはいくつかあって吹奏楽の音は楽しめたものの、本番の演奏シーンはあえてお預けされた。3期での演奏シーンで迫力を思い出すのが楽しみだ。