アキラナウェイ

風の谷のナウシカのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)
5.0
ジブリがまだジブリじゃなかった1984年。
宮崎駿監督長編アニメーション映画の第2作目。

もう、何が素晴らしいって、その世界観である。

1,000年前の「火の七日間」により、巨大産業文明は終わりを告げ、有毒の瘴気を発する菌類の森「腐海」に覆われた世界。腐海に暮らす巨大な蟲達。酸の海から吹く風で毒から守られた辺境の「風の谷」。火の七日間で世界を焼き尽くした「巨神兵」を求め谷の平和を脅かす「トルメキア王国」。

この世界の全てを、あの宮崎駿が頭の中で創り出したというのだから凄い。しかもアニメ化されたのは全7巻から成る原作漫画の2巻の途中まで。アニメでは描き切れていない、「土鬼(ドルク)」や「森の人」が登場し、物語はより深く語り継がれていく。

もう、このスケールのデカさと、突き詰められたリアリズムと、普遍的なメッセージ性に、完全に脱帽である。

2020年の今。
劇場の大スクリーンで、「風の谷のナウシカ」を堪能出来るとは。

震えた…!!
魂が震えた…!!

断言していい。
ナウシカを超えるヒロインはいまだ日本のアニメーション界に現れてはいない。風の谷の族長ジルの娘。16歳にして、父を凌ぐ風使いであり、谷の民に慕われ、蟲を愛し、世界の謎をただ1人解き明かした少女。母の様に慈しみ深く、戦士の様に凛々しく強い。声優、島本須美の澄んだ声がナウシカの多面的な魅力を体現している。

対するトルメキアの第四皇女クシャナもまた魅力的だ。彼女も17歳という設定には驚いた。巨神兵の投入により、腐海を焼き祓い、世界を再び人の手に還そうとする野心家である。榊原良子の声がまた良い。

巨神兵を掘り当てたペジテ市。
巨神兵を狙うトルメキア。
巨神兵を運ぶ輸送船が墜落した事で運命の渦に巻き込まれる風の谷。

「王蟲」による大海嘯(だいかいしょう)が、風の谷を飲み込もうとしている事を知り、ただ1人、ナウシカが全てを止めようと「メーヴェ」で空を駆ける。

泣けた!!
ゲロ泣きした!!
腐海の謎を知った少女が、
人も蟲も愛した少女が、
その身を犠牲にして失われた大地との絆を取り戻そうとする姿に!!

久石譲の音楽が胸を昂らせる。
「メーヴェとコルベットの戦い」が特に良い。

人と自然の共生。
それこそがナウシカが求める理想郷であり、宮崎駿が1984年から説いているテーマである。この精神は1997年の「もののけ姫」で更に進化を遂げ、2020年の今でも、これっぽっちも色褪せる事なく、常に我々に問われている至上命題なのだ。

通り名が好きな僕。
「辺境一の剣士、ユパ・ミラルダ」の通り名が死ぬ程カッコ良くて好き。

蟲笛。
ガンシップ。
キツネリスのテト。
トリウマのカイとクイ。
長靴いっぱい食べたいチコの実。

宮崎駿の創り出した世界の全てが愛おしい。

え?まだ観た事ない?
急いで劇場へ!!