緑青

名探偵コナン 瞳の中の暗殺者の緑青のレビュー・感想・評価

4.0
めっちゃおもしろかったんですけど……良すぎて呆然とした……エンディングの1行目の歌詞がグッときます。
2000年て、まだセルなのだろうか、色彩が良すぎて震えた。背景も作画も信じられないほど良い。シャッターを持ち上げて開けるとか、閉まるエレベーターのドアとか、銃の反動とか、そういうさりげないところの作画が的確で、大袈裟でもなく無駄がないのがすごい。特にスケボがめちゃくちゃよかった。私が観た近年の作品は、スケボがジェット機みたいにばびゅんと進む(地面との摩擦のない乗り物かのような)作画が多い印象で、それはそれで気持ちよくていいんですが、この映画のスケボはちゃんと地面をタイヤが走っててその煙が上がってるしコナンの体重移動で方向転換するんですよ、これは凄いよ。あと、まだ車がセル描き(CGじゃない)に見えるんですが、最後パトカーが集まってくるところとかめっちゃ形が生き生きしている、とても好き。人混みとかも全部セルで、本当に自然に書いてある。なんたる基礎技量よ……。
しかしまぁ脚本がめちゃくちゃ良い。ここまでで観た中で段違いに良い。夢中になっちゃった。新一として生きていた頃の感覚で何かしようとして「アッ違う、今は俺はコナンだ」と思い出す瞬間が、ギャグだけで終われない焦燥感に満ちていてエモくてよかった。コナン君がきっちりかっこいい。確かに1巻を読んだ感覚はこんな感じだったなと思い出した。フーダニットとハウダニットを解き明かすし犯人もコナン君も結構強気で話すよね。大人は頑張ってお仕事してるし、みんな事件に巻き込まれるので関係者以外立ち入り禁止の場に居ても不自然でないし、子どもはできるだけ安全なように注意されるし、コナン君と灰原さんはちょっと大人な会話(10代だけど)するのが良いですね。夫婦の会話はもっと良いです。フィクションラインの設定が上手な印象でした。
あとやっぱり高山さんはほんんんんんんんとうに凄い、すごい役者さん。あの方がいてこその、アニメコナンの成功であることを、何作観てもしみじみ思う。
また、白鳥刑事こんなかっっこよいお声だった…?!と震えたら、塩沢兼人さんだったのですね。

トロピカルランドが爆発しなかったので安堵した。元ネタが明確だけどパロディのセンスがピーキーすぎて凄く行ってみたい気持ちになった。1巻で確かにそんなことあったな!と思い出したよ。私ならあんな凄惨なヤバい事件のあった乗り物は取り壊すし2度と乗りませんが……()
当時の服装とか、建物とか、時代の雰囲気が残っていてすごく良かった。スーツの形に「おっ!」となる。ちょっとバブルの残り香がある感じ。あらゆるところのディティールがきちんとしていて、作り手の人間としての経験値の反映が見えてしみじみする……大人が作ってる映画だね……。

基本的にミステリーって「いやそこまで考え抜いてやれる犯人おらんやろ」「そんな凝った謎解きするかよ」てなりがちだと思うしこれもそうだと思うけどスレスレそういう夢に酔える脚本と演出でホントに良いミステリーを観た!という気持ちになりました。良いミステリーはエモーショナルだよね。おもしろかったです。
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