のら

SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してるののらのレビュー・感想・評価

2.0
"私の中の消しゴム"のイ・ジェハンによる、韓国の漫画「見えなくても聞こえなくても愛してる」の実写化で、目と耳に障害を持ったカップルを山下智久と新木優子が演じている。

結論から先に云うと、こういう治らない病気や障害を扱っているのに、初手でやぶ医者の診断によって治らない病気だと誤診され主人公が自暴自棄になり自殺未遂まで起こす。そもそも主人公に閉塞隅角緑内障の診断がくだされた時点で、医者は治らないと言うのだけど、本来手術なり眼圧下げる薬なりで様子見るわけで、この手の話でやぶ医者引くのは、劇中で主人公が激怒する担当編集者とこの作品の作り手達は同じメンタリティーで仕事しているとしか思えない。

ヒロインと主人公の出会いにしても、ヒロインが主人公の SNS の写真から自宅を特定して凸るし、主人公の漫画の展開が気に入らなくて家を飛び出すしでやっていることがスティーブン・キングのミザリーに出てくるアニーと変わらない。

そもそもの問題として、この二人が何処に惹かれ合っているのか、サブタイトルにもある ”見えない事” ”聞こえない事” が二人の関係性になんの影響も与えていない。結局この話は仕事が出来なくなって落ち込んでいた所に、押しかけてきた女が優しくしてくれたから好きになったというだけで、甘えているだけの話になっている。

これなんで変なことになっているの?という話になるんだけど、元の漫画原作がどちらかというと、主人公の日常をコミカルなタッチで描いているのに、何故か本作ではガチ目のリアリティ重視の描写になっている。でも話の部分には原作のコミカルな要素が残されているので、話はコミカルなのに演技はシリアスというミスマッチを犯してしまっている。

役者陣の演技に関しては文句の付け所が無い。ただ話の部分の出来とか、それ以前に今この題材を難病ものとして、しかも何の新規性も無くやる意意味があるのか疑問だし、特にサイレントがあれだけ支持を集めた事を考えると、どうしても時代錯誤は否めない。
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