あるミュージシャンが恐ろしい(hideous)モンスターに変身するお話...?
この20分間の短編映画は、オリヴァー・シムというアーティストの『Hideous Bastard』というアルバムのMV的役割を果たす短編映画であることを念頭に置いて見ると、本作の独特な構成にも納得できる。
自伝的な物語であると同時に、同性愛者への差別へのカウンターをB級スラッシャーホラー映画の体裁で描く。20分と短い時間の映画ではあるが全く一貫性は無く、歌を歌いながら様々なジャンルを駆け回っていく様子はなかなか面白い。
恐ろしいモンスター(同性愛者であることの劣等感の表れ?)と化した男は周りから嘲笑われる。それに憤ったモンスターは周りの人物を惨殺し、自身がゲイであることを歌でカミングアウトする...という流れが面白い。オリヴァー・シムのインタビュー記事を読むと、彼自身がアウティングによって悩まされたこと、そして今回のアルバムは自身の過去のカミングアウトの意図を含んでいること...を踏まえて見ると、このコメディ調のスラッシャー映画の場面にマイノリティによるカウンターの意図が込められていることが窺える。すると、その後の展開は彼にとっての救済とも言える。
オリヴァー・シムについてはこの映画を見るまで何も知らなかったが、映画内で歌われる歌がどれも良くて興味が湧いてきた。
物語自体がシュールなため、演出もシュールな演出が多く、なかなか面白かった !