『Magdalena Viraga』『Queen of Diamonds』『The Bloody Child』へと続く緩い四部作の第一篇。本作品はエルサレムの正統派ユダヤ人コミュニティから疎外されている若い女性ゾハラを描く中編である。映画は『Queen of Diamonds』のように彼女の何気ない日常を追いかけるが、彼女の存在は奇妙にも無視されたように漂い続けている。ナレーションはゾハラの思考を導くように、彼女の声と同じセリフを吐き、遂には思考も奪い取る。ヨーロッパ系ユダヤ人の一家に生まれ、アメリカとイスラエルを往来していたメンケス自身がイスラエルで感じた疎外感や孤独を基にしているらしく、街中で真っピンクのツルッとしたシャツを着て浮きまくってるのも経験なんだろう。やがて、彼女は郊外の砂漠へと旅立つ。この荒涼とした心象風景のような砂漠は、『Queen of Diamonds』にも登場した。エルサレム、ラスベガス、それぞれ砂漠と隣接した都市という不思議な共通性があって興味深い。