ごんす

赦しのごんすのレビュー・感想・評価

赦し(2022年製作の映画)
3.9
娘を殺された二人の元夫婦と犯行当時少女だった加害者の葛藤。
元妻の方は再婚し新たな生活を送っているが元夫の方は犯人への憎しみに執着するという形で時間が止まっているように見える。
酷評の方を先に見聞きしていたのだけど自分は好きな映画だった。

登場人物に対して結構イライラし、一度はそれぞれ嫌いになるのだがこれも人間かなと思う。
笑うしかない人間の愚かさやみっともなさ、そして少しの愛しさが見える。

低品質邦画には落ちぶれたり心が不安定な人間のアルコール描写がお粗末なことが多いがこれは良かった気がする。
特に家で一人で呑んでる時に立ち飲みスタイルになっている描写など秀逸!
(元夫はそもそも酒強すぎなのではとも思う)

好きな映画だけれど世に出てくるのが少し遅かったのかもと感じる。
やっぱりこういう話多いなーとはどうしても思ってしまったしそこを超えてくるこの映画固有の良さがもう少しあれば!と惜しい。

明らかに日本人が登場人物で舞台も日本に見えるけど映画では日本の法律と違うのでは?とかがツッコミ所としてノイズになるのも分かる。
自分はたまに作品に対して早い段階でこれは合わんわ!と態度を決めてしまい、良さに気付けていなかったかも…と感じることがある。

この映画ももしかしたら社会派的な要素や魂の救済といった所を期待していたらそうなったかもしれないけど自分には映画内のこいつらを見守るというだけで本作は観れてしまった。

元夫の“自分と向き合うのが怖いからまずは絶対的に責めていい人間を責める”という姿勢は無意識に自分もやったことあるのでは?と考えさせられイライラする。

MEGUMI演じる元妻の再婚相手を演じた藤森慎吾は『かがみの孤城』に次いでパブリックイメージを上手く利用した良いキャスティングだと思った。
優しいけど浅い感じ見事。
こいつが酒を呑んでる所もなかなか良くて全体的にアルコールの使い方が上手い映画だった。
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