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クイーン・オブ・ダイヤモンドのarchのレビュー・感想・評価

3.9
砂漠のど真ん中。全くなんの風土も存在しない場所に、資本主義の名のもとに削り出された空虚にギラつく都市、ラスベガス。
前作の『マグダレーナ・ヴィラガ』の"水"と対比されるように、燃えるヤシの木や線路上の熱気、扇風機や喉を潤す姿など、画面から熱気と乾燥が伝わってくる。
ニナ・メンケスらしい時間と空間の捉え方は本作でも行われていて、繰り返される時間、囚われたような空間が、解体され、ティルダウスの心象を再現するかのように再構築されていた。特に象徴的なのは、カジノでのディール。永遠に繰り返されるカード捌きを永遠と観せられる体験は、パーツショットや観客の視点、淡々と流れる時間を観察するような映像を圧縮しており、観客を単なる観察者にはせず、客体である彼女への感情移入を可能にしている。

どこか漠然と囚われている彼女は隣人の結婚式から抜け出す事で決心が着いたかのように、ヒッチハイクでラスベガスを離れる。その先に必ずしも救いがあるとは思えないけれど、「ここではないどこか」へ主体的に向かう姿には、彼女の物語が動き始めたのだというカタルシスを感じさせた。
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