はる

クイーン・オブ・ダイヤモンドのはるのレビュー・感想・評価

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マグダレーナヴィラガから、クイーンオブダイヤモンドへ。
同じティンカメンケスが今度はマニキュアを塗って艶やかに描かれていて驚く。でも燃えて崩れる木を大股で見つめるショットがあったかと思ったら、ビーチで寝転がり、陽が顔を刺す美しいショットがあって、昼は老人の介護をしている一方、夜はディーラーで手際よくカードを切る様子は全く違う人のように見える。ここでも同じような分裂した個、何とか繋ごうとしているプロセスが映画になってる。

マグダレーナヴィラガがほとんど室内で撮られていたのと対称的に、海辺の町の様子が断片的に繋がれていく。移動が描かれないのは、なにか体系化されて、大きな枠組みに組み込まれることを拒んでいるよう。

ここで描かれているのは、一人一人の記憶の集積であって、相対的に描かれていく彼女の記憶である。海におしっこをする少年と、現在の風景に昔の風景をみつめる老人の背中が重なる。

でも誰の声も残っていかない。奪われて、また渡されて、それは例えばカードのようで、例えば波のようだ。

あまりにも長いカジノのシーンは、ここまでやると面白くないのだけど、嫌でも忘れられない強さと、それでこの繰り返しの退廃的な連鎖が響いてくる。カット割りのルールはわかんないけど

アザの残る新婦、アントニオ・カルロス・ジョビンのギターに合わせて、新郎新婦なんて忘れて皆がゆるくダンスしているところがとても好きだった、影がぼんやりと背中にあたって気持ちのいい風が吹いて、子供はぼんやりと眺めてる。そういえばニナメンケスはよく緩くダンスさせるなぁと思った。
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