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ダムゼル/運命を拓きし者のstanleyk2001のレビュー・感想・評価

ダムゼル/運命を拓きし者(2024年製作の映画)
3.6
『ダムゼル/運命を拓きし者』
Damsel
(高貴な生まれの未婚の)「乙女」
2024
USA
Netflix

ドラゴン「お前一人で何ができる?」
エロディ「私には味方がいる。今までここで罪もないのに殺された彼女たちが味方だ」

『ダムゼル』は主人公の名前ではなくて「高貴な生まれの乙女」という意味。

貧しい小国の姫エロディは豊かな王国の王子と結婚することになったが結婚話は真っ赤な嘘。ドラゴンに差し出す生贄に選ばれたのだった。エロディは大人しく殺されるようなやわな姫ではなかったので自分で運命を切り開いていく。

「原作」が東京創元社から出版されているが実はノベライゼーションらしい。

脚本はダン・マゾーという男性だがこのお話は「虐げられてきた女性が立ち上がる話」

地下の洞窟をドラゴンから逃げるうちにドラゴンの火焔が届かない安全な空間にたどり着いたエロディは壁にたくさんの女性の名前が彫られているのに気がつく。今までに生け贄にされた女性の名前だ。そして地下空間の地図が壁に掘られていて脱出経路まで記されていた。「脱出した人がいるんだ!」

エロディはドレスを切り裂いてタンクトップとショートパンツ風の動きやすいスタイルになり脱出計画を立てて巨大なドラゴンに挑む。

絶対に勝てないだろうと思える強大なドラゴンからエロディは逃げ切れるのか?

海外の映画批評サイトでは賛否があるみたいだけど、私は面白かったし女性をエンパワーメントする映画だと気がついてから目が離せなくなった。

王子との結婚が実はドラゴンの生け贄。それは今まで苦しんできた世界中の「嫁」たちの物語ではないのか。夫、義母、義父、小姑から虐げられる嫁の物語の隠喩ではないかと思った。

ドラゴンが生け贄を要求してきた理由も切なかったりする。最後はスカッとするハッピーエンドで良かった。

ドラゴンの声はイラン出身の女優ショーレ・アグダシュルー。なかなか迫力がある声。圧倒的な強さを感じさせる声だった。

豊かな王国の女王はロビン・ライト。高貴かつ非情な義母を好演。

エロディの父は娘のために頑張る人物だが女王の夫は台詞すらなかった。ここがちょっと引っかかる所。ドラゴンも実はメスなので女性対女性の話になってる。

生け贄の風習ができてしまった原因は昔の王(男性)が原因なんだけど嫁を虐げる原因である父権主義を隠してしまったのが脚本家さんずるいなとも思った。

そんな欠点はあるけれど、これから人生の荒波に立ち向かう女子小学生、中学生に観てもらいたい作品です。
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