エイプリル

終わらない週末のエイプリルのネタバレレビュー・内容・結末

終わらない週末(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

レビューを見るとかなり賛否両論な作品で、その評価もなんとなくわかる映画でした。
非常にわかりにくい映画なんですよね。作中には「突然突っ込んでくるオイルタンカー」「激突しまくる自動運転テスラ車」「謎の鹿」「歯が抜ける奇病」「みんななんかちょっとずつ嘘つく」みたいな伏線とかフックがたくさん出てきます。これにはかなり興奮しますし、謎を解きたいモチベーションがどんどん上がってきます。
正直こんな多くの伏線、最後に回収できるのか?と思いながら見ていたのですが、終わってみてもそれっぽい考察ができるだけで謎が完全には明らかになりません。
しかも奇病については虫刺されなのか放射能なのかわからないし、誰の言ってることが正しかったのかもよくわかりません。このすっきりしない感じが賛否両論なところなんだと思いました。

それで、個人的にこの作品について自分は面白かった立場です。最後の最後まで結局アメリカに一体何が起きてるのかわからないのですが、そんなのは別にどうでもいいんですよね。この作品の面白いのは「情報を参照して行動することが過剰になってしまった人類の悲劇」を風刺的に描いてるところだと思います。
スマホや携帯がないと情報一つ入手できず家に閉じ籠り、ナビがなければ街にも行けず、ダニーはダニーで陰謀論にハマってる。ジョージ親子は、妻がまだ生きてるかもしれないのに僅かな情報だけで非合理な悲観的結末を想像してる。
今まで正確な情報が手に入りすぎていたため、ちょっとでもそれがシャットアウトされると急に混乱したりめちゃくちゃな論理を勝手に作ったりしてしまう様子はリアリティがありましたし、その表現こそが作品の真骨頂で、「何が起きているのか」をあえて明らかにしていない理由でもあります。事実、視聴者も伏線という名のたくさんの情報を与えられて混乱したり憶測したりしましたよね。これこそ登場人物の感じていた不安や怖さで、彼らの気持ちを一部体験できたとさえ思いました。
後、うまいなーと思ったのは兄の歯が抜ける奇病のことです。これ虫に刺されたシーンを実際にこっちも見てますし「昨日虫に刺された」とか言うからマジで虫刺されによる奇病なのかと思いきや、でも実際はそうじゃないかもしれない、という展開になるところです。先入観を与えられると人間は簡単にそれを真実だと思ってしまうことを示されてこっちもびっくりしました。中盤で「先入観」についての話題が出てきますが、これも多分意図的ですよね。
ジョージもドヤ顔で戦争に至るまでの3つのステップを挙げてるけど、普通にならずもの部隊の仕業だったりして、頭良さそうに見える彼も先入観に支配されるとこんなもんなんだということが描写されてるのも良かったです。

ただちょっとドローンを使った空撮カメラワークは何度も出てきてくどくて、「これってオシャレでしょ?」みたいな感じが透けて見えるのは若干嫌だったな…最近ドローン買ったんですか?

わけの分からん情報に振り回されず、終始フレンズという唯一手で触れられるものだけを追い求めた娘が一番最初に安全地帯にたどり着けるというのも因果な感じで良かったです。
全てが計算づくで作られた作品で、確かにすっきりはさせてくれませんが、映画として相当に面白い体験をさせてもらいました。
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