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こどもが映画をつくるときのzhenli13のレビュー・感想・評価

こどもが映画をつくるとき(2021年製作の映画)
3.8
エキサイティングだった。民生用カメラや一眼レフで撮られたであろう生の感じのショットもこの映画に合っててよかったし、そのショットから極力監督の意図が出ないように配慮されてるのが伝わってきた。

子どもが集まって映画を撮るという活動は、とてもいい教材だと思ってる。将来映画に携わる人材を育成するためでは勿論ない。しかしそれは子ども集めて放っておけば彼らの自由な発想が出てくる、なんて甘っちょろいものではない。今どき、大人の権力で押さえつけて言うこときかせるわけにもいかないし。
ここでは二人の指導者(というか支援者)のもと、子どもらが二つのチームに分かれてお題に沿ったロケーションと撮影素材を探し、撮影し、時に演じ、編集してプレゼンポスターを作る。すべて子どもたちに話し合わせる。

チーム分けされた子どもたちはランダムに選ばれたのだろうか。どちらかというと男性指導者のチームの方が落ち着きがあり(お調子者もいるが想定内)年長の女の子二人が核となって割と皆が一緒に事を進めている。
対して女性指導者のチームはクセの強い子が集まってしまってる。1ミリもじっとしていられず自分勝手で主張が激しい女の子、興味無いことはやらずにどこか行ってしまうむっつりわがままお姫様(多分自分の嫌いなことは一生やらずに済むタイプ←偏見)がいて、それにつられてちょろちょろする男の子もいて、年長の理論派男子(この男子が撮った池のショットがすんごいよかった。池に石投げさせて、人は入れずに棕櫚の木をバーンと中央に据えて背景の池の波紋と水音を撮るという)はいるもののまとめるまではできない。そのため男性指導者チームに比べて、指導者の介入度が大きい。
これはもう…見てていたたまれないというか…わかるわ〜〜〜!て感じで。めちゃくちゃ指導者側の手腕が試されるんだよね…でも努めて冷静に穏やかに上手く誘導してて素晴らしかったよ大川さん(女性指導者の方)!

とはいえそういう目立つタイプの子だけでなく、一人の男の子(サムネにもなっているタコ坊主でずっとマイク持ってる)は何をする訳でも無いんだけど見てるだけで妙に味があり、おとなしいがちょっと皆と違う動きをしてて、うまーいところを下支えするというなかなか魅力的なお子さんで、彼へのフォーカスが多いように感じるのもさもありなん。

商店街の撮影交渉や、池の鯉の餌を買うために主催者に理由を伝えて交渉、なども子どもたちでやってて、私があれくらいの年齢だったら絶対ムリと思った。商店街の交渉をしたのは敬語もそつなく使える小学6年生くらいの女の子だった(ほかの子も交渉してみてほしかった)が、あれくらいでも私ムリ。てかそもそも知らない異年齢の子たちとコミュニケーションとって何かやるとか絶対ムリだ…
大勢で話し合いながらの編集ってどうやるんだろうと思ってたので、あれもいいもの見られたな。使ってるのはPremiere Proかな。

諏訪敦彦『ライオンは今夜死ぬ』でも子どもたちの話し合いは素晴らしかった。本作でもてんでバラバラな子どもたちがカメラの再生画面を皆で一斉に見て笑顔になるという絶好のジョイント・アテンションを捉えてて泣いた。
でもちょっと長い。90分で十分。
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