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ニモーナのRenのレビュー・感想・評価

ニモーナ(2023年製作の映画)
4.5
Netflix加入者なら観ない理由が無い!『~ アクロス・ザ・スパイダーバース』が無双すると思われた2023年に現れたダークホース。素晴らしかった。

騎士団が残る未来都市という唯一無二の世界観がまず面白かった。ドローンもホログラムもある一方で王国は鎧を着て剣を交わす騎士に安全を委ねている。地下深くに眠るモンスターの復活を恐れながら、『進撃の巨人』よろしく国を壁で囲って暮らすディストピア。
当然それがただのSFファンタジーのためだけに用意された設定でないことはすぐに分かる。騎士団は上官からの洗脳と武力制圧の象徴。自分と違う個性を持った者はモンスターなのか?と問う、現代社会の寓話になっている。

バリスター(cv. リズ・アーメッド)は腕利の騎士で孤児でゲイ(彼は彼のセクシャリティを理由に迫害されているような描写はおそらく無かった)。自在に姿を変える「人と違う」個性を持つニモーナ(cv. クロエ・グレース・モレッツ)はノンバイナリーなキャラクターとして描かれる。そんな2人が、バリスターの陛下殺害容疑を晴らすべく共に奔走するバディアクションムービーであり、明確にクィアの物語だ。
この映画は、どんなノンポリ層をも「普遍の物語」という感想に逃げさせない。自分とは違うマイノリティをモンスターと呼び分断するマジョリティ側の有害性を炙り出すドラマだからだ。

そういう意味で『怪物』とも重ねられる。どちらも、マイノリティを怪物(モンスター)とする社会の怪物性が中心にある。そんな世界は変われるのかという問い。自分は『怪物』賛成派だけど、もしあちらにモヤモヤした方にはこちらも差し出したい。他者を迫害してしまう一人ひとりの怪物性に気付き、そんな人々を受容する「ハッピーエンド」はあるのか?

自分たちとは個性が違うからモンスターである。モンスターっぽいから生き辛いという。女の子っぽいから女の子と呼ぶ。そういう全てのラベリングを跳ね返していく。他者が他人をどう形容することも怖いことであり、確実なのは「名前がニモーナ」ということだけ。本質と向き合え、と突き付けるニモーナのキャラクター性と力強いタイトル。

マイノリティをマイノリティと雑に括ることにも慎重であることがよく分かる。バリスターからニモーナへの無意識の偏見がその証左だ。

そこに魂を乗せるアニメーションもまた絵本的で目に楽しい。ピクサーともドリームワークスともSPAとも距離を置く、ともすればゲームのような自由自在さが「洗脳・抑圧の社会からの脱却」というテーマと相反するようで合致していて気持ち良い。音楽のチョイスもかっこよかった。

ディズニーがお蔵入りにした企画であることを知ると色々思うことがある。悔しいけど、Netflixだからこそここまでバキバキに仕上げられたのかな、とも思ったりした。原作読みたい....!

その他、
○ 17分残しでエンドロールに突入したのだけ少し残念。もっとこの世界を見られるのかと思った!
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