ろくすそるす

ミスター・グッドバーを探してのろくすそるすのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

 「ロズアン・クイン事件」という米国で起こった実際の事件を元に女の悲劇を描く社会派転落ドラマ。
 『ダンサー・インザ・ダーク』や『少女ムシェット』のような女の破滅はどちらかというと外部の要因によって落ちてゆく物語であったが、本作は「Mr.手頃な男」を探して酒場で男を漁り「セックス」に溺れ「ドラック」を啜るうちに主人公が自ら破滅へと踏み行ってしまうところが特徴である。
 幼少期に「ポリオ(脊椎の病)」の手術で奇跡的に一命をとりとめたダイアン・キートン扮する主人公。学生時代に若い大学教授を誘惑し、処女を喪失する。ポルノ映画とドラッグに溺れぶっ飛んだ生き方をする姉を見て影響を受けたのか、保守的で怒りっぽい父に飽き飽きして家を飛び出す。そして、妊娠する度に、堕胎させるために病院に通う。
 昼は難聴の子供たちに手話を交えて、発音を教える真面目な女教師であるが、夜な夜な快楽に耽る。ウディ・アレン映画の印象が強いキートンだが、セックス・シーンも生々しく激しいものになっている。
 平気で二股をかけて、遊び回る奔放さ。知的で優しい良い人そうな「昼顔」と「夜顔」の演じ分けの巧さが、見所である。そして、最終部分の衝撃さは恐らく一度見たら忘れることができないと思う。
 ラストの明滅するライトの中で不良のリチャード・ギアに刺し殺され物化してゆく彼女の表情とか、闇の中にぬっと能面のような青い顔が浮き出ているところとか、恐ろしい演出である。『東電OL事件』を思い出す。