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コット、はじまりの夏のrebのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
3.3
1981年夏アイルランドの田舎町、子だくさんの家族で育った9歳のコットは、夏休みに親戚夫婦の家に預けられる。
原作はアイルランドで最も愛されている文学作品で、少女の内なるモノローグがアイルランド語で綴られているらしい。
監督は本作が長編デビュー作のアイルランド出身のコルム・バレード。
本国では、今ではアイルランド語を第一言語とする人々は人口の2%程度らしい。
監督の父親はアイルランド語を残す活動をやっていて、子供の頃は周りが英語なので居心地の悪さを感じたらしいが、アイルランド語は英語より個人的で、童心に帰るような遊び心や温かさを感じられる言語だと語る。
本作でも叔母がコットの髪をとかしながらアイルランド語で数を数えるシーンがあるが、包み込むような優しい響きだ。
大きな喪失感を抱えた叔母夫婦にとって、家庭や学校に馴染めず孤独を抱えていたコットは、慈しみの対象であり、それによって夫婦も癒されていく。
まぁ実家が酷すぎるんだけどね。
そして本作は“走る“ことが、コットの気持ちの変化や成長を表す重要な要素となっている。
感情を表に出さず多くを語らないコット。
いつも何かにじっと耐えている。
そんな彼女が最後の最後に“走る“ことで、魂を解放する。
観てるこっちは、抑えに抑え我慢に我慢を強いられた感情に耐えきれず、ついに涙が‥。
ちなみにチラシのこの黄色いワンピースのシーンは、完全ネタバレなので、他のシーンにした方が良かったかも。
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