いつもいっちゃん

コット、はじまりの夏のいつもいっちゃんのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
5.0
第95回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート作品。
美しく繊細。ままならなさと優しさを兼ねた傑作。

親から関心を持たれない内気な少女コット。
両親に新しい子供ができる夏、親戚夫婦の家で過ごすことになったコットの物語。
優しいおばさんと不器用ながら気遣い、見守るおじさん。
彼女の成長と共に違う場所で育まれる新たな絆。
農家で過ごす中で見つける自らの感情の起伏。
子牛にミルクを飲ませる場面は、母乳と粉ミルクのモチーフが見事。
育ての親から与えられるミルクと別の家族から与えられるミルク、どちらが濃いか。
またおばさんの優しさにもじんわりきていたが、おじさんとの繋がりにより心揺さぶられました。
沈黙の大切さ。また沈黙しないことで失われるもの。だから2人の関係性も会話が少ないがちゃんと通ずるものがある。
人間も丁寧に描き、生活感ある描写と共に心地よく時間が流れる。
そして少女が抱くささやかな願いと疾走に涙が溢れる。
走る意味合いも変化していったのも素晴らしい。
余韻までが美しい。
自然の音がここまで気持ちが良いとは。