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コット、はじまりの夏のmichiのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
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映画には終わりがあるからいいけど、コットにとっては夏が終わっても秋があり冬があることを思うとしんどくて仕方ない。
家の中で常に緊張してなきゃいけないこと、この人を怒らせてはいけないと息を潜めること、一時の安寧を知ってからまたその日々に戻ることって息を止めて冷たい水の中に潜るようなものでは。主演の女の子の演技がとても上手くてトラウマが蘇る。
これ、そんなに綺麗だった、優しかった、で終われるような映画だろうか。経済的に困窮し、働き手を求めるような言動が多い父親と娘ばかりの家庭(男産まれるまで産ませる気だったのか)、発言力すら奪われていそうな母親。あの家の中に戻ったあとで、買い与えてもらったワンピースや靴のことをなんと言われるか。下手したら燃やされるよ。
そのワンピース素敵だよ、似合ってるよと言ってもらえたことだけを、ちゃんと覚えていられるか。それだけを覚えていてほしい、でもそこまでの強さを子供に求めるのか。思い出を糧に耐え忍ぶことを求めるのではなくて、思い出が思い出にならない日常をどうかこの子にと、やっぱり思ってしまう。ベタな展開になってもいいからもう少しだけ希望を持たせてほしかった。
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