akina

パスト ライブス/再会のakinaのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
-
“イニョン“=摂理、縁 がテーマに掲げられている本作。
英語にはそれにぴったり合う言葉がないそうだ。
日本人だからなのか、”縁”というものは人間関係やモノも含めた巡り合わせというものにおいて使われる言葉であり、かくいう私自身も”縁”というものに想いを巡らせることもある。
そして、とかく”縁”とか”運命”というものに、人は淡い期待やロマンチックさを抱いたりもするのだろう。
本作の”運命”の主人公である2人の時の流れと生きている場所の物語は、不思議とその淡いロマンチックな類のものとは感じなかった。
むしろ自分でも意外だったけれど、運命的な二人の再会に巡り合ってしまったノラ(ナヨン)の夫の、”縁”"運命"に敵わないという不安を抱きながらも、今現在のノラと向き合い尊重しようとする彼の姿にこそ心が惹かれた。

作品の構成として、ビフォアシリーズを思い出さずにはいられなかった。
“縁”ある二人の会話劇。時間も違えば場所も違う。
諸行無常の世の中で、何かは変わらないのではないかと信じたい気持ちもあるが、それは、”お互いを知ろうとしている”ということなのかもしれない。

ノラにとっては、12歳のナヨンそしてルーツである韓国の象徴であるヘソンと、36歳になった今のノラとNY/アメリカの象徴である夫のアーサー、そのどちらとも言葉をしっかりと交わしていることが素晴らしいなと思ったのだけど、やがて3人でバーに並んで話すシーンのなんとも言えない感じが苦しかった。ノラの頭越しのシーンなんてアーサーの心情を想像してしまって。
(一方、こんなに愛されているノラが羨ましくもあり、それだけ彼女が自己認識をしっかり持って然るべき言動をし生きているかならのだ、ということも理解できる)

そんなことを考えた後の、ヘソンを見送りに左に向かって歩いていくノラと、見送った後に右に向かって家に(アーサーの元に)戻るノラ。そしてラストシーン。映画の時間軸をきっちり表現したあのトラッキングショットはとても印象的で、そこで涙を思わず零してしまった。

“縁”というものが切れてしまうことに多少なりとも不安や恐怖を抱いたりすることはあるけれど、過去/現在/未来、自分の人生のそのどこかでひとときでもつながった”縁”、繋がりに感謝して、繋がった”縁”とちゃんと向き合えたらいいなと思った。



余談ですが、夫・アーサー役の役者さん(ジョン・マガロ)が、大好きなドラマ「アンブレラ・アカデミー」でちょと嫌な役やっていた人だったのですが、ストーリーが進むにつれ、とてもアーサーに愛着が湧いたので少し印象が変わりました。

もう一つ余談。
NYの街って、街中を歩くと情報量の多さや熱量に負けそうになるけれど、俯瞰で映る街はとても美しいな、と思った。
akina

akina