やさ島

パスト ライブス/再会のやさ島のネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ナヨン(ノラ)にとっては、話があるとヘソンに言って、メールではなくわざわざビデオ通話を繋いで「いつNYに来てくれるの?」と聞いた日に全部終わっていたのだと思う。現実的には、ヘソンがここで「すぐに行く」と返事をしていたらふたりの未来は変わっていたと思う。その会話のあとで、距離を置こうと自ら提案したときもナヨンは毅然とした態度でいたのに、ビデオ通話を切ったら泣いていたし。
その12年後にNYで再会した時もナヨンは一貫した態度だった。ヘソンに対して親しげに、そして誠実に接しながらもきっちり線を引いていたように見える。感傷的になっているヘソンをまっすぐな眼差しで見送って、全てが終わってからアーサー(アメリカ人の夫)のもとへ戻って初めて涙を流した。この態度それ自体が今の夫に対する誠意だと感じて、ナヨンという人物にとても好感を持った。
アーサーがナヨンに言った「君のことを知っている」という台詞が印象的だった。アーサーはナヨンのことを知っているからナヨンをヘソンのもとへ送り出した。ヘソンを出迎えるための韓国語も多分わざわざ準備して精一杯の好意的な態度でヘソンを迎えた。ナヨンがアーサーに完全に背を向けてヘソンと2人だけで(しかもアーサーには理解できない韓国語で)話し続けても何も言わなかった。アーサーが韓国語を覚えようとした動機もすごくいじらしかった。ナヨンが今愛すべき人・共に人生を歩むべき人はアーサーだと信じている理由が傍目から見てもよくわかった。実際にアーサーに会って、ヘソンが「ナヨンはアーサーのもとに残る人であって、自分の元からは去っていく人であるからこそナヨンなのだ」と自然に理解していたのも良かった。みんな良かった。ナヨンもきっとわかってもらえると思ってヘソンをアーサーに会わせたのではないかと思うほど。
「あの子(12歳の少女だった自分)はあなたのもとへ置いてきたの」という台詞がすてきだった。
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