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パスト ライブス/再会のりのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

2人は本当にイニョン(運命)だったのだろうか?12歳の時にお互い惹かれあっていたことは確かだけど、生涯を共に歩む相手としてはアーサーが運命の人だったと思う。
ヘソンとノラはそれぞれの歩む道の中にお互いが存在していなかったように思う。

36歳でやっと再開した時は2人が強烈に惹かれあっているようにはどうしても思えなかったし、お互い2人でいると12歳のまま時が止まっていて、アーサーの立場を考えられないようなとても未熟者な2人に見えてしまった。特にノラの方が、再会してみて違う事に気づいてしまったからこそ、夢物語のようなロマンスな運命は存在しないという現実を実感し切なくて涙を流したんだと思うと、ある意味においてはとても現実的な物語だった。

自分が信じてきた感情の理由付けが必要で、互いにイニョンだと信じたかっただけ。会えてなかったからこそ逆に幻想を抱いたままになってしまい、相手の人生の中に自分はいないという確信をただ単に持つきっかけが無かっただけなのだろう。

アーサーが「出会ってたのが別の誰かだったらその人と結婚していたの?」という質問を不安げにしていたけど、その答えはもちろん悲しい事にYesなんだよな。だけど、この広い世界の中でタイミングよく出会えて相手の歩む道の中に自分がいるという時点で価値があって勝ちなんだよ。もちろん他にもっと条件の良い人はこの世界にいたかもしれないけれど、出会えてなかったら何も始まらないし何も生まれない。人が生涯で出会える人数は3万人程度しかいない中で、同じ時間を共に過ごせているだけで素晴らしいご縁がある。

ノラが夢を追い求めなくなってしまった(かつては目指していた賞のことも今となっては考えなくなっていた)ことも個人的には物凄く悲しかった。これもまた非常に現実味を感じた側面だった。
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