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パスト ライブス/再会のミズのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

諦観の美しさ。
哀愁漂う大人の関係性をイニョンー縁ーという概念で優しく包んだ作品。

本作には全体的に諦めが漂う。
幼なじみで当時おそらく両思いであったノラとヘソンの再開。しかし、2人は今世で結ばれる運命ではなかった。それをお互いがほとんどハッキリと理解している。それを理解した上で一縷の期待を胸に再会の時間を楽しむヘソン。結ばれた相手との人生に疑いを持たず、それでも再会を喜ぶノラ。いずれも諦観から来る哀愁を纏っている。「解ってる解っているが、それでも今は会おう」そんな感じ。

そしてまた、ノラの現夫アーサーにも別種の諦観が漂う。
彼はノラと結ばれた相手でありながら、ノラとヘソンの縁には自分が届かない何かであることに自覚的である。それでも彼らの再会を甘んじて受け入れ、最後は彼女との縁を受け入れるように優しく包み込むのである。

振り返ればこの物語における包み込む行為、抱擁は重要な意味を持っていたように思える。

ノラとヘソン再開時のハグ、2人の別れのハグ、最後のアーサーとノラのハグ。
いずれも何か、哀愁、諦観といった負に近い感情を包み込むおおらかさを持っている。それらを繋ぎ、納得させる概念がイニョンなのだろう。

再開時のハグでは久々の再開に戸惑うヘソンを今を生きる(ように見える)ノラの余裕が包み、このハグで縁は再動する。別れのハグではお互い消化不良に終わった別れをヘソンの諦観を含んだ決意が包み、ここで縁はひとたびの決着点に至る。そして、新たに歩み出すノラの門出に夫アーサーは無言で寄り添うのである。新たな縁が脈動する痛みを包み込むようだ。

あれこれ縁や運命でざっくりまとめてしまうことは暴力的だが、縁として広く引いて見ることでこぼれ落ちた感情や関係性をすくい取るようなそんな作品であった、
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