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パスト ライブス/再会のtakaeのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.5
“摂理” または “運命”
特に人との関係を意味する韓国の言葉「イニョン」

縁、前世、運命。
私は人との出会いは全て縁や運命によるものだと思っています。もちろん、出会いだけでなく別れも。

そして、現世で繋がりのある相手とは前世でも何らかの形で繋がっていて、それはきっと来世にも繋がっていく。
その全てを信じている私にとってこの作品は、きっとこの先何度も思い出す、特別で忘れられない作品になりました。

初恋の相手であるノラとヘソン。

12歳。お互い恋心を抱く2人はノラの海外移住により離れ離れになる。
12年後、24歳になった2人はオンラインで再会し、画面を通してたくさんのことを語り合い、惹かれ合う。だけど、相手を好きだという気持ちだけで突き進めるほど若くはない2人は、互いを思いながらすれ違う。

そしてその12年後の36歳。ノラが作家のアーサーと結婚していることを知りながら、ヘソンは彼女に会うためにNYを訪れ、24年ぶりに2人は再会を果たします。

人との縁は不思議なもの。
人生は必要な時に必要な人に出会えるようにできていると私は思っています。

だけど、出会いがあれば別れもある。
人は変わっていくものだし、ずっと同じではいられない。同じでいようとしても変わっていくこともあれば、変わろうとしても同じままのものも。

12歳で離ればなれになった後、韓国に残ったヘソンとカナダに移住したノラ。
その環境の違いもあると思いますが、ノラは強くしなやかなに自分の道を切り開く自立した大人の女性に成長し、そんなノラとの縁をヘソンが手繰り寄せ追いかける...私の目には2人の関係がそんな風にも映りました。

ノラが結婚しているのを知りながら、ヘソンが遠いNYまで彼女に会いに行った理由。

離れることを決めた側より、それを受け入れる側の方がきっと辛い。
どちらも辛いことには変わりないけど、別れを告げられた側の時間はそこで止まってしまう。その時の気持ちのままひとり取り残されてしまったように感じる。

ノラとの縁が本物なら、夫がいても自分を選んでくれるのではないか、それを確かめたくて彼女に会いに行ったのかもしれないとも思いましたが、あのノラを見送った12歳の少年。離れようと言われ胸を痛めた24歳の青年。あの時言えなかったサヨナラを、自ら彼女に伝えるために会いに来たのではないか...そう思えてならなかった。

2人の後ろ姿や相手を見つめる時の視線。その微妙な表情から互いに相手を特別だと思ってることが伝わってくる。
だけど同時に、諦めにも似た表情がにじみ出ているのがすごく切なかった。

互いにとっての“イニョン” であるのは疑いようのないこと。だけど、どうやってもすれ違う。それもまた運命と言えるのかも。
すれ違い続けるのが運命だなんて悲しすぎるけど、この縁はきっと来世にも繋がっている。
思いがけず疎遠になってしまった大切な人達のことを思い、胸が締め付けられ時々ふいに泣けてくることもあるけれど、きっと来世でまた違う形で出会えるはず。そしたらまた色んな話をしよう。自分の体験を重ねながらそんな風にも思いました。

泣かなくなったノラが最後に流した涙。あれはきっと、24年間ずっと言えなかったサヨナラをお互いやっと言えたから。ヘソンとの本当の別れを実感したことによる涙なのかも。

あそこにアーサーがいてくれて良かった。
全部理解して包み込んでくれるアーサーの深い愛にも本当に胸打たれました。

過去に戻ることはできない。少しの後悔と寂しさと胸の痛みを抱えながら人は前に進んでいく。

目の前の縁を大切にしよう。
これは自分の物語だと、この映画を観た人はそう感じるはず。誰にとっても普遍的な、人との縁を描いた美しく切ない物語。とんでもなく大泣きして頭がガンガンするけど、今の自分で観に行けて良かったと心からそう思います。
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