みっちぇる

パスト ライブス/再会のみっちぇるのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

幼少期に離散して、SNSで再度繋がるも会えず、さらに10年後に再会する。
冒頭のシーンで提示された「この関係が何か?」が全編を通してのテーマだと気づく。

ラストシーンで夫に泣き崩れるノラを見て、これは魯迅の「故郷」だったのではないかと感じた。
上昇志向、アメリカで移民として成功を目指し邁進してきたノラ。大学生の頃はもしかしたら両立していたかもしれないヘソンとの物語は、三十過ぎてから再開した時にはもうあり得ないものになってしまった。
(ヘソンと会わないことを決意してからすぐに結婚に向かいグリーンカードを取得した)

ヘソンとの再会で、あったかもしれない可能性を見つけることができるかもしれなかったが、現実はあり得たかもしれない人生から遠くまで来たを実感することにしかならない。でも一抹の名残惜しさが残る。それはヘソンへの恋心というより、母国への郷愁ではなかったか。それでも、今のノラにできることは自分の現在の生き方を肯定することのみだ。切ない。
(そして今のパートナーはその葛藤に共感できず,恋心の再燃を懸念するのは、ノラからしてももどかしいのではないか)

アメリカ社会で立ち上がる苦しさを自分は実体験で経験していない。その経験がある人には、この作品は恋愛映画ではなく、生き方を問う物語に見えるのではないだろうか。
みっちぇる

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