Kazaki

パスト ライブス/再会のKazakiのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.0
やたらリアルで映画ってことを忘れる。
見てて嫌な気持ちもなく、ただもどかしいだけなのは、全員がひとつの偽りもなく生きているからだと思う。何かを無理やりどうこうせず、ある意味とても運命に身を委ねて、あとは自分を生きるだけって感じのスタンスで嫌味がない。
私はアーサー全然タイプじゃないけど、アーサーの人としての強さに脱帽した。ノラにとっての結婚は、自分を生きるためのものだったように思う。タイミングと利害が一致して、しかも別に一緒にいてしんどくないし、異性としても見れる。自分が自分らしく生きるのにその時最適だった人と結婚した。それだけ。アーサーが言うように、同じ条件同じタイミングでアーサーのような別な人がいたとしたら、きっとノラはその人でも良かったんじゃないかなって。こんなん自分で言えるる?!考えただけで心がえぐられる!!
でもここでノラが自分勝手に映らないのは、ノラ自身もそれを多分分かった上で、でもやっぱり結婚するには愛のある関係であるべきだから、そこにきちんと愛を投影させようとしてるし、そのスタンスを貫く強さがある。たとえ愛が他の場所にあったとしても。
その意味ではノラもものすごく強い女性だと思う。
名前忘れたけど、韓国の時の友達。彼も彼で、ノラとまたどうにかなりたいとか下心抜きにして、ただノラが好きでその思いをほったらかしにしたくないっていう自分の気持ちを大切に、わざわざニューヨークまでやってきた。(12年前にちょっと頑張って来といたら良かったやんと思う気持ちもあるけど、でもやっぱり当時の彼にとっては久しぶりに発見した初恋の人と、自分の人生を天秤にかけた時に自分の人生の”先に“彼女がいることを望んでたんだと思う。)
いわゆる恋愛とか、自分の夢を叶えるとか、そんな映画じゃなくて、現実的なドラマだった。恋愛に夢中になってしまってはいけないという理性を保つための、自分の人生に集中することを是とする風潮や自身の生き方を守るための、心の優しい人たちの生き方を切り取ったような映画。
好きでした。
Kazaki

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