あちぴろ

パスト ライブス/再会のあちぴろのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.3
ちょっと今回は大人なレビューを心がけようかなと思えるほど、胸にチクっとくる様な切ない映画。

話題にもなっていたので映画館で観ようという意識も働いていたものの観に行けず。
PPVでもなかなか金額が落ちず、今回ユネクの399円でレンタル。

父親の仕事の関係でアメリカに移住することが決まった12歳の少女ナヨン(グレタ・リー)と幼馴染みの少年ヘソン(ユ・テオ)の24年に及ぶ苦くも尊い物語。
そこにナヨン=ノラの夫アーサー(ジョン・マガロ)の嫉妬心と不安と理解ある夫を演じようとする葛藤。
僕には『イニョン《縁》』という言葉が3人の心に「鎖」になっていた様に感じた。

ヘソンにとって「ノラ」はノラではなく、ナヨンなんだよね、きっと。
12年が経った24歳の時、行動に移せなかった自分への後悔。
「たられば」で語るバーのシーンの話には「行動しなかった」ヘソンの悔いが痛かった。
韓国語でアーサーを置いてけぼりにして話す「あの時行動すれば変わったのか」と言う話は観ていて本当に辛かった。

アーサーにとってヘソンの存在の怖さも痛いほどわかる。
下手な恋愛小説だと、花嫁を連れ去られてしまう立ち位置なんだが、その不安、我慢して包容力を見せようとするアーサーの心の機微が辛い。自分ならどうするだろうか。行ってほしくないけど、13時間飛行機に揺られてNYに来たヘソンを思いやる気持ちも分かる。ノラを信じるしかない。ケータイを触りながらノラの帰りを待つくだりは、初日にゲームをしていた時と表情の違いでよく分かった。
帰ってくるだろうかという不安がよく現れていた。

何より、ラストシーン。
ウーバーがやってくるあの2分。
荷物を置いてからの二人の見つめ合うシーン。
キスするのか?するなよ?と画面のヘソンに話しかけてしまうほどだった。

緩やかに進む二人の24年、たった数日の24年ぶりの再会。
果たして、会うことが正しかったんだろうか。
会わないままで互いの人生を過ごす方が「しこり」が残らずに《縁》というものを生涯感じながら生きていけたんじゃないのかな。

大人になった今だからこそ感じられる様な苦い映画でありながら、「美しさ」の残る素敵な映画だと思う。もちろん大人になったと思う自分だから感じるものだが。


自分には幼馴染みと呼べる女の子はいなかったが、小学1年生で恋をした中川亜希子さんに、今会いたいか?と問われたらノーと答える。いや、答えたい。
会いたい気持ちもあれば変わってしまったであろう彼女を知るのはプラスにならない気がする。
もちろん自分も若作りはしているが、かなり年老いたわけで。

永遠にあの頃のままの彼女を心の中で描いておくべきだろうと思う。
ヘソンの心の中のナヨンである様に。

(U-NEXTのポイントレンタルにて)
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