この恋が結ばれないことは理解している。でもこれは他生の縁が取り持った運命だから、きっと二人は生まれ変わってもまた出会う。なのに去り際に涙が溢れるのは何故だろう。平凡な人生のいくつもの取り返しつかない選択を包み込むような、東洋的死生観の癒しが優しい。
24年前、12年前、現在と、二人の袖が擦れ合った3つの時層を辿りながら、互いの魂の伴奏者としてあった今生の縁の深さを描く。いくつもの輪廻の中で、今回は出会って去る人として相手に影響を与え、与えられる運命だったということ。結ばれることだけが運命じゃない。
12年前のFB上の再会が再会扱いになってないのが良いね。テクノロジーの発達は距離も時差も無くしたように見えて、絶対に縮まらない断絶を再認識させるだけだったし、画面越しの相手の姿には最初の別離の前の印象を更新する力はない。だから二人にはさらに時間をおいて顔を合わせて話す必要があった。
男は24年前の初恋の少女を追い続けた。女は初恋の少年を記憶の片隅に追いやっていた。だから会って、初恋はそこにはもう居ないけれど、自身の心の中に永遠に住み続けていることに気づかなければならなかった。