やったカニ

ミツバチと私のやったカニのレビュー・感想・評価

ミツバチと私(2023年製作の映画)
3.9
水に浸かる、ひいては服を脱ぐという行為が表す親密さ。
市民プールの男女二元論なごみごみとした社会と対照するように、大自然の川で遊ぶ風景は、広く美しく描かれる。そこでは、ルシアは自己を開放するし、親密な誰かがいる。
ショッピングモールでルシアが癇癪?を起こしたときは心苦しかった。これからも何度か、こういう経験をするんだろうなという痛み。だって、夏休みが終われば、ルシアは帰らなくてはならないから。

自身を表象する言葉を持たない彼女が、ルシアという唯一の名前を獲得する。これってどこか奇跡的な瞬間だったように思う。女性であることが重要なルシアにとっての、確かなものとして。『ミツバチのささやき』を彷彿とさせるような、ラストの名前の呼びかけは、母親の叫びと呼応する。

観てから少し時間が空いて、セリフの細部がぼやけてしまったけど、この映画は心を軽くする言葉や、窮屈をはねのける強かな言葉がほんとうにさらりと発されていて、良かったのを覚えている。
やったカニ

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