ぽーちゃん

妖怪の孫のぽーちゃんのレビュー・感想・評価

妖怪の孫(2023年製作の映画)
3.4
『昭和の妖怪』岸信介の孫。
何故「私は岸信介の娘婿ではない。安倍寛の息子だ」という父ではなく、妖怪祖父の政治信条を踏襲しようと固執したのか。
それは一推察でしかないのかもしれない。
でも、様々な証言をもって、提示された彼の背景は興味深かった。

そして、背景がなんであれ、“妖怪の孫“が国民を分断し、戦後民主主義をズタズタにし、恐ろしい独裁政治の礎を築いた事実は変わらないし、許されるものではない。
それを踏襲しようとする子分やチルドレン達がこの国を破滅へと牽引しつつあることも間違いがない。
彼らが“美しい国“というかけがえのない我が国は、今や“先進国“ではなく、かつてのスペインのように没落の途を辿りつつある。

最後の監督の独白を聴いて、昔佐藤浩市が巨悪を暴こうとして命を狙われたジャーナリストを演じていたドラマ(鷲尾伊佐子さんが出てたかなぁ??)を思い出した。
あの頃は、こんなアブない話、今の日本では単なるフィクションや、と思っていた(でも、こういうことが実際にあり得るような社会は恐ろしい、、、とも身震いしていた)ことが、もう、フィクションではなく、実際に起こる世の中になっているのだと震撼する。

「ふかんよう」「慈虚責任(じこせきにん)」「セメ・テクール」という妖怪が、人々の心に棲みつき冒し始めているように、この国の政治の中枢にガッチリと根を下ろし蔓延る妖怪の末裔が我が国の民主主義や基本的人権、差別のないこころや平和を侵食し破壊し始めている。

若い人にこそ観てほしいけれど、昼間の時間帯に1日1回だけ、しかも今日は平日だったので、終わって席を立ち出口に向かうのは、“就職が決まって、髪を切り、「もう若くないさ」と言い訳した“年代の男性が多く、、、。アラ還のアタシが一番若いくらい??

子どもや孫の世代達が、その責めを負わずに、美しく平和な祖国を誇りに思って生を全うできるように、私達にできることはなんだろう??と切なく思った。
ぽーちゃん

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