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ビヨンド・ユートピア 脱北のmasososoのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

衝撃的。
北朝鮮という国について日本人はある程度共通したイメージを持つことができるだろう。ただその解像度は決して鮮明ではなくてあくまでも“独裁”や“監視社会”“洗脳”といったキーワードからイメージしているだけでしかない。
このドキュメンタリーでは今まさに国境を越え脱北と送還、天国と地獄の狭間にいる一家に密着しており極めて鮮度の高い現実を映している。

80代のお婆さんに対して脱北の最中に行われたインタビューが印象的だった。
死と隣り合わせの厳しい強行軍にありながらいまだに政権を否定することはせず金正恩を崇拝している。国民のために努力している金正恩がいるのに国が上向かないのは自分達国民のせいだと自らを責める。
そしてその孫である年端もいかないような少女達も金正恩は世界で一番立派な人だと笑顔で答える。
洗脳の恐ろしさを生々しく感じさせられる。

作中ではこの家族の物語と並行してもう一つ、先に韓国で生活している母親が10年前に生き別れた息子を脱北させようとブローカーとやり取りをする話が展開される。
結果として息子は通報を受け北朝鮮へと送還されてしまい収容所送りになってしまう。対照的な二つの結末によって先の一家のように救われるケースというのは極々一部であり、脱北の失敗によって命を落としたり親族にまで窮地を伝染させてしまうことや、大多数の国民が真実のない仮初の幸せを享受する現状が何も変わっていないことを訴えかけてくる。
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