その国しか知らず、
その国がユートピアと教え込まれ、
そう信じているのに
何故にユートピアから脱するのか
死なない為である
殺されない為である
ユートピアでは生きられない
ユートピアには“世界一立派な方”がいるのに
そんなよく出来たSFのような世界線がすぐそこに実在する
38度線を越えるには
中国、ベトナム、ラオス、タイの4カ国を経由する
過酷を極める旅路
ブローカーは無論商人であり、脱北者は飯の種でしかない
再現ではない本物の命懸けの人らを、
文字通り密着した撮影
時にスマホで撮られた暗くブレた映像は見にくく、高い緊張が続き、こちらも疲労する
恣意的な演出はおよそ無く、
かの牧師はアーメンとは言うが、
中国で結ばれた脱北者の妻を韓国に連れて行くことに奔走したことが運命の回り始めのようだ
不幸な事故で失った息子さんの命と、
関わった千人を超える脱北者らの命と
密着カメラと隠し撮りとインタビューで世に出した監督らの使命感
それをシネコンで観られる国に産まれた運
歴史的にも貴重であろう映像は、
言葉はなんだが、とても面白かった
知らないものや知りたいものを知れる国にある自分の幸運を噛みしめつつ、
自らも命を懸けて支援する側の使命感も目の当たりにして、
恵まれたものとしてのミッションは何かと考えている