ハリィしろかわ

虎の尾を踏む男達のハリィしろかわのレビュー・感想・評価

虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)
4.2
今年の年明けに、松本白鴎・松本幸四郎・市川染五郎親子三代同時襲名の記念公演として、幸四郎十八番「勧進帳」がテレビ中継されていたのを見て、この作品を思い出した。
久しぶりに本作品を鑑賞。

本作は、黒澤明監督初の時代劇映画であり、能の『安宅』を下敷きにした歌舞伎『勧進帳』を題材に、義経・弁慶一行の安宅の関所越えを描いたもの。

弁慶役の大河内傳次郎の重々しい演技と、強力役(地元の道案内兼荷物運び)のエノケンこと榎本健一の滑稽なコメディリリーフとの対比が本作のキモ。
この対比は、同じ黒澤明監督の「乱」における、仲代達矢(殿様)とピーター(道化)にも見られるね。

大河内傳次郎の独特のセリフ回しは今の人たちには聞き取りづらいかも。
昔、タモリさんや関根勤さんがラジオでモノマネしていたのを思い出した。

そして、強力役のエノケンの喜怒哀楽の激しい顔面演技や酔っ払ったときの身軽な演技には本当に笑わせられる。特に、本作最大の盛り上がり場面である弁慶の勧進帳読みの際、関所守りに勧進帳が白紙なのがバレたらどうしよう、という焦りをセリフなしで顔の表情だけで表すところは本当に上手い、そして笑える!
(ちなみに強力は映画オリジナルのキャラクターです。)

エノケンの動きを見ていると、若い頃の堺正章(かくし芸大会とか「西遊記」とか)や志村けん(「だいじょうぶだぁ」とか)を思い出すけど、当たり前だが、こっち(エノケン)が元祖ですからね!さすが浅草芸人!

「勧進帳」は本来悲壮感漂う作品だが、このエノケンの存在でハラハラドキドキのスリル感あるコメディとしても楽しめるのがよいです。

本作、上映時間が59分なので、「黒澤明監督作品を観てみたいけど、ハードルが高すぎて、何を最初に観たらいいのか分からないー!」という方にオススメです。

こういう作品を年のはじめに観たいなんて、私もやっぱり日本人だねー。
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