歴史に疎く、観終わってからアイスランド史を調べてみました（恥）。アイスランド人のデンマーク人への自己卑下したような、それでいてそこはかとなく刺々しい敵対感情が劇中端々に表現されていたのは、アイスランドが長きに渡ってデンマークの統治下に置かれていたからなんですね。
それを踏まえても①なぜこんな偏屈な上から目線の人物が牧師をやっているのか、②いくら宗主国嫌いでも、クライアントに危害を加えるようなガイドの仕事振りはいかがなものか、という点が終始気になり、登場人物にあまり感情移入できませんでした。とはいえ神の下では皆平等を説く聖職者ですら、植民時代はこんな感覚だったのかもしれませんが。あと、ガイドの毎朝の健康体操はツボにはまりました。整うブームのはしりじゃないですか。
旅の牧師と恋仲になった現地の娘が、自らひねった雌鳥を指して言った「雌は他にもいっぱいいる」との言葉どおり、牧師亡き後も自然の摂理で他の男と交い、子孫を残していくだろうし、ガイドに殺された牧師の馬も、旅の途中で溺れた通訳も、娘はやらんと父親に殺された牧師自身でさえも、皆生きて死んで自然に還っていく。
人が何を画策しようと自然の一部でしかない、という監督のメッセージを感じました。良い映画でした。
