りょう

マネーボーイズのりょうのレビュー・感想・評価

マネーボーイズ(2021年製作の映画)
3.4
 台湾の映画だと思って観ましたが、台湾は同性婚が法制化されているので、こんな展開にはならないはずだと不思議でした。舞台は中国だったのかもしれません。
 序盤は、登場人物たちが真正なゲイなのか、やむなく男娼を生業としているだけなのかわかりませんでした。女性との結婚は偽装だったはずなのに、その妻が妊娠したり、数年ぶりに再会したゲイの恋人が女性と結婚して、しかも子どもが3人もいたり…。ゲイであることが抑圧されるがゆえに、本人たちの性的指向も揺らいでしまっていたということなのでしょうか。
 主人公のフェイは男娼のコミュニティで生活していたので、周囲にゲイが多かったのは当然ですが、同郷の舎弟であるロンとの関係があんな展開になるなんて…、創作にしても都合よすぎる印象でした。
 それにしても、フェイはとても家族想いで、一生懸命に仕送りをしていたことは理解しますが、自分の人生をどうしたかったのか、とても曖昧でした。彼にとっては何が幸福だったのか…、そのために何かしていたようにも思えないし、とても無気力な印象だったので、物語そのものが空虚な雰囲気です。悪天候のシーンが多かったことは、そうしたイメージを増幅させる意図があったのかもしれません。
 なんとなくウォン・カーウァイ監督の「ブエノスアイレス」をイメージしましたが、レスリー・チャンとトニー・レオンが純粋な恋人同士だったし、何より2人のスーパースターぶりと比較するのは、この作品にとっては酷でしかありません。
 C.B. Yi監督は、移住したオーストリアでミヒャエル・ハネケ監督に師事したそうで、これが長編デビューなら、将来にも期待できそうです。
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