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夜明けのすべてのakariのネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

簡単に生きるのは、簡単じゃない。
映画館を出て、自分の生き方についてぼうっと考える時間は、夜が明けていく時間に似ている気がします。ふわふわした気持ちで、説明はつきません。とても素敵な作品でした。不安定な二人を支える周りの人々の優しさに、何度も何度も涙がこぼれました。
藤沢さんと山添くん。PMS、パニック障害を抱えた二人は職場の同僚として出会います。症状が出ないと見た目ではわかりにくく、自分の感情に影響がある病なのに自分の感情ではコントロールができない。似ているようで分け合うことのできないその苦しみは、少しだけ、3回に1回くらいなら助け合うことができるのかもしれません。パニック障害になり、良かったことなんてないと言った山添くん。彼を病気の前に戻して電車に乗せてあげることはできないけれど、彼の世界を自転車で行けるぶん少し広げてあげることはできます。
予告から気になっていた髪を切るシーンが可愛かったです。山添くんの初めて見せる表情に私も笑いました。藤沢さんが山添くんにしば漬けを買っていったのも面白かったです。お守りを余分に買う藤沢さん可愛い。お守りって余分に買うものか?笑
藤沢さんの一番最初の言葉から共感で涙が出そうになりました。社会に順応しきれない、置いていかれているような感覚がずっとしています。考えすぎだ、もっと簡単に楽に生きようと思うのだけれど、簡単に生きるのは簡単ではない。社会に順応した振る舞いをするたび、本来の私からどんどん遠ざかっていく感覚がありました。みんな大変なんだからとまた考えて、自分を無理やり動かします。生きづらい、生きることに向いていないと思うことがたくさんあります。でも「夜明けのすべて」を見て、そのままでいいのだと思えました。夜があるから、その闇の向こうを想像できる。この地球が回り続ける限り、必ず朝はやってくる。そしてまた夜。孤独に輝く星が、私たちの道標となります。
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