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夜明けのすべてのkoheiのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
5.0
栗田科学の人たちは自分たちの会社に漂う優しい空気に自覚的じゃないのが可笑しくて愛おしかった。きっとそういう一面だけじゃないのだろうし、栗田科学とこの映画に出てくる人たちが特別やさしいわけでもない。プラネタリウムは擬似的に宇宙を見る道具だけど、この映画もフィクションで、擬似的な宇宙を描いた作品。そこに映る星々の煌めきは、映画館の暗闇の空間を出たあともきっとそこかしこに認めることができるはず。そう信じさせてくれるだけでありがたい、美しい擬似的な宇宙を見た。
藤沢さんと山添くんは辛い症状を抱えているけれど、決して心をふさぎきってはいない。それが重要だと思った。自分に閉じていないからふたりは会話できたし、髪を切る/切らせることもできた。誰でもよかったわけじゃなくて、あのふたりじゃないと支え合えなかった。でもお互いに誰かがやってくる余地を心に残していたから、やさしい関係性を築けたのだと思う。助ける/助けられる余地を残すことも、一種のやさしさだとこの映画を観ていると感じる。
映画を観ているわたしにも、目を澄ませてよく見ているとあたたかいものがじっと押し寄せてきて、映画へ心を開いていることへの祝福を得たようだった。ありがたや…
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