社会一般なるものの価値観と相容れない特性を持つがゆえに苦しんできた男女二人が、互いのそれを知ることで緩やかなれど支え合い、自分達なりの居所を見出していく作品。
適合しなければいけないと思い込んでいた社会のレールからはみ出したことで、当初は思い悩むのだが、一元的な考え方を相対化していくことで自負心が芽生えはじめていくその過程が素晴らしい。
静謐で淡々としたディテールが積み重ねられていくのだが、それだけにラスト付近のあのナレーションには普段泣かないタイプの自分も涙せざるを得ず。
彼らを支える周りの人物達の存在も光っていて、特に渋川清彦の演技が印象に残った。
分かりやすく二人が結ばれましたとか、象徴的な何かを得て幸せになりましたと言う安易さが皆無で、等身大ながらも非常に豊かな味わいの大傑作。
