久遠

夜明けのすべての久遠のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
5.0
かけがえのない、人生を通して愛し続けるであろう作品。ちょっと泣きすぎて、足早に劇場を去るしかなかった。三宅唱監督映画は、なにか問答無用で僕を感動させてしまう粒子が画面に漂っているのではと言いたくなる。白眉は天体観測、そして渋川清彦の涙。ちゃんと10秒目閉じたよ。

前作はリズムを感じる傑作で、今作はナレーションと記録の反復を強調する新たな超絶傑作でした。ひとりだった夜空がふたりの、そして沢山の人たちとともに過ごす場所に移行する様を繊細かつ鮮烈に描く。庇護する/される関係ではなく、各々が抱える痛みと共に夜明けを迎えよう。

主演二人は勿論、全員すばらしくて、特に芋生悠さんの佇まいが!コンサルで上手くやってる人、という記号的なそれではなく、大切な人を支えたい/元気になってほしいと支える優しさが全面に出ているキャラクターでとても良かった。あと、サポートし合う関係って素敵だなと思いました。

慢性的なうつ病を抱えている自分にとっては、映画内の世界を少し羨ましく思う反面、現実もそう変わりはなくて、自らの病を解決できなくとも僕も誰かを支えることで世界を少しでも美しくできるのだと強く思えた。弱さを曝け出すのは怖いし辛いけれど、明日からまた生きていきます。
久遠

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