このレビューはネタバレを含みます
16mmフィルムのざらついた映像が特徴的。
PMS(月経前症候群)の藤沢(上白石萌音)とパニック障害の山添(松村北斗)は、それぞれが前職でのトラブルにより、偶々職場の同僚となる。
最初はお互い相容れない関係だったが、お互いの病気のことを知っていくうちに自然と助け合っていく2人。
作中でも触れられるうみへび座のアルファルド(孤(こ)独(どく)なものという意味)と、こぐま座のポラリス(現在の北極星)のように、互いが互いの目印となることにより、自分の現在の位置を確かめる。
いつも気を使い過ぎな藤沢が彼と食べていたお菓子の残りを無性に頬張るシーン。
明らかに彼女の影響を受け、鯛焼きを職場の人達に配るシーン。
これまで周りの人達には病気のことを話してなかった彼が、堂々とヘルメットを着けて自転車通勤している姿。
等々、当事者同士は勿論、栗田科学という小さな街企業の職場の人々や、山添の前職の上司の辻本(渋川清彦)ら、彼等の近くでちゃんと向かい合って接してきた人達は、世間の人々では到底気付かない彼等の小さな変化に気付くことができる。
いつの間にか楽しそうに仕事の話をする山添を見て、自分の息子の前で泣いてしまった辻本に観客も涙する。
若者達は先輩方から何かを学び、先輩方は若者達からまた何かを学ぶ。
夜明け前が一番暗い。人々は夜明けに希望を抱き、夜になると地球以外の星達の存在を知る。
以前旅した奄美大島や西表島の夜空を思い出した。流星群があった訳でもない平凡な日だったはずのに、街灯が少ない島では流れ星や無数の星達が観測でき、感動を覚えた。
眼の前の光ではなく、静寂と暗闇によって段々と見えてくる遠くの光。
映画館自体が正にプラネタリウムにいるかのような、優しい光に包まれる本作は、今の時代に最も必要なセラピー映画。
自転と公転により、今日という同じ日は二度と無いと聞くと尚更に、明日から人に優しくしようと思う感化されやすい自分の存在に気付く。