後入れかやく

夜明けのすべての後入れかやくのネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 星が時間をかけて少しずつ位置を変えていくように、人も同じままではいられない。守られる側だった子が今度は親を守る側になり、いつも近くにいたはずの人も突然遠くにいってしまう。
 ただ、夜が明け星が見えなくろうとも、星のめぐりが夜空の見え方を変えようとも、昼もたしかに星は空で輝き続けているし、星の光に彩られた夜も曇り空で真っ暗な夜も何度でもやってくる。人の関係も、きっと同じなんだろう。

 藤沢と山添の関係は、お互いに良い印象では始まらない。序盤の二人にはピリピリした雰囲気が漂い、いつ爆発するだろうかと、観ていてヒヤヒヤすることも。
 しかし中盤、会社で二人が偶然出会った日曜日の夜、二人の会話には棘があってピリピリした雰囲気もあったけれど、爆発することはなく、「まあ、こういうこともあるよね。」とでもいうように二人は相手の言葉を受け止めながら流すことができていた。
 このとき私は、二人の関係にやっと安心感をもつことができた。相手に刺激を与えないようじわじわと距離をとるのではなく、また、怒りをむき出しにして仲たがいしてしまうのでもなく、ピリピリすることもあるけれど仲良く過ごすことはできる同志のような存在になれたのだと思った。
 さらに、このシーンは、避けられない変化と不変のものへの愛おしさや悲しさなど様々な感情を描く本作品の象徴のようだと感じた。闇深く何も見えないときもあれば、やわらかな光が心と体をあたためることもある。私が夜を好きでも嫌いでも必ず夜はやってきて、それは去っていく。そして、また違う夜がやってくる。